今週のテーマは、ルーツの探究です。

現在、私自身が2019年夏から7年かけて行ってきたルーツ探究の全貌を開示するために、ある著作を執筆しています。
「自分のルーツがどこにあったのか」という問いは、誰もが一度は考えたことがあるでしょうが、世界的に見ても日本人は自らのルーツに対する探究心が強いことで知られています。既にルーツ探究はツーリズムに組み込まれて世界中で需要が高まっていますが、現状、私たち日本人に最適化されたルーツ探究のサービスはありません。

日本人に最適化されたルーツ探究を、どのように実現するか。それは私の中で大きなテーマとなっていますが、今回はルーツの考え方を見ていきます。

昨今、急速に進化を遂げた遺伝子検査技術の恩恵を受けて、これまで特定が困難だった日本人のルーツに関わる遺伝的研究が、次々と報告されています。

遺伝子から日本人のルーツを考える提唱は、1990年に始まったヒトゲノム計画が始まる頃に並行して行われています。このプロジェクトは、日本・英国・フランス・ドイツ・中国の5カ国を米国政府が主導した大規模なものでしたが、13年後の2003年4月に解読完了が宣言されました。
この新時代の動きが始まる中、1991年に日本で二重構造モデルを提唱したのが自然人類学者の埴原和郎です。埴原は形質人類学・頭蓋骨計測などの研究から、日本人の遺伝的ルーツには縄文人、そして弥生時代から古墳時代にかけて日本列島に来た北東アジア起源の渡来人が混血したと提唱します。この「縄文×弥生」の構造モデルは当時広く受け入れ、長年に渡って定説になってきました。おそらく読者の大半も、この説から日本人像を教えられたでしょう。

しかし、徐々に二重構造モデルが日本人のルーツを単純化し過ぎているのではないかという疑念が生まれ、やがて2021年に新たな提唱が行われます。それが埴原の二重構造モデルを修正する形で提唱された三重構造モデルです。
このモデルは遺伝子研究の観点から提唱されたことに特徴があります。そこでは、埴原の提唱した縄文人・弥生人という考え方を取らず、「縄文系・北東アジア系・東アジア系」と祖先集団の系統を弁別したことに特徴があります。分かりやすく言えば、「北東アジア系=弥生人」「東アジア系=古墳人」です。

そして古墳時代に成立したこの三重構造モデルが、現代日本人にも遺伝的に通底していることを指摘し、日本人のルーツにはこの三つが交差していることが新たに示されたのです。これだけを見ると、いかにも三重構造モデルが正しいように思えてしまいますが、本当に私たち日本人の遺伝的ルーツは、この3つだけで解明することができるのでしょうか。ここに私は疑問を感じています。

少なくとも言えることは、遺伝子側から民族のルーツを特定しようとすることは、二つや三つの単純化によっては困難だということです。大規模な集団次元で言えば、三重構造モデルは正しいのですが、問題は「弥生時代=北東アジア系」「古墳時代=東アジア系」として渡来人を断定してしまうことです。
三重構造モデルに説得力があるように見えてしまうのは、従来の日本の歴史観において、「中国ー朝鮮ー日本」の結びつきをイメージしやすいからです。そのため、遺伝子検査が普及する過程では、この三つを前提とするルーツは基本に据えられるでしょうが、逆に言えばそこが科学の限界とも言えます。

遺伝子検査が国内に普及すればするほど、自分のルーツがどこにあったのかを求める需要は高まっていくでしょうから、その過程でこれまで研究範囲外だった膨大な数の日本人のデータが蓄積・分析されます。その時、この三重構造モデルの欠陥が浮上すると思いますが、それは三重構造モデルに集約されない人々が多発する可能性です。
ここで私が問いかけたいことは、ルーツは遺伝子によってのみ解明されるものではないということ。むしろ、遺伝子検査によって自身のルーツを特定した時、初めてルーツ探究の扉が開かれるとも言えます。

実は、私自身も2月中旬に遺伝子検査を受けています。結果が出るのが5月下旬頃ですが、そこでは遺伝的なルーツ推定もマッピングされるため、三重構造モデルの範疇では概ね特定可能となります。そのため、現時点で私は自分の遺伝的なルーツがどこにあるのか、どういう構成なのかについては知りません。

ただ、これまで7年間かけて縄文・弥生・古墳の古代日本の実像を探究し続けた過程で、徐々に自分がやっていることが、ルーツという起源を明らかにすることに接近していることに気づきました。これは当初は全く想像もしていなかったものです。
そして私が言うルーツとは、私個人のルーツであり、同時に日本民族のルーツです。個人的には、日本人が単一民族や一元的な血筋であったとは考えておらず、それはイデオロギーとしては魅力的でも、内実は多元的な系統を持っていると見るのが正しいと考えています。

誰もが日本のルーツに中国や朝鮮、あるいはロシアが関与していることは何となく想像できるでしょう。しかし、これまでの調査から見て、海を移動した古代の海人族の動きは、現代日本人の想像を遥かに凌駕するほど活発です。つまり、単に日本の歴史観に通底する朝鮮半島南部からの渡来ルートだけに限定されていたのではなく、渡来人は日本列島の広範囲に渡ってくることができ、そこで暮らしてきたという歴史があるのです。

この時、三重構造モデルの外部に置かれてしまい、考えられない地域が東南アジアやオセアニアです。
まさか日本人の血筋に、こうした遠く離れた地域が関係しているとは思えないでしょうが、黒潮などの海流・潮流・季節風を読み解けば、この地域から日本列島に渡来することは十分可能です。そして渡来することが可能ならば、日本側から渡来することも可能だったということです。ここが意外に盲点となっています。

今後、遺伝的ルーツはこうした複雑な観点から解き明かされていくでしょうが、ここで問題となるのは、遺伝子だけが自分たちのルーツを表すわけではないということです。

探究を続ける中で私が考えていることは、日本人の誰もが「血筋のルーツ」と「神系のルーツ」を持っていることです。
血筋のルーツは、主に遺伝子や家系図を辿ることによって概ね特定されるものですが、神系のルーツと私が呼んでいるものは、「神の系譜」や「神の系統」であり、非科学的な領域です。そしてこの二つの異なるルーツを、誰もがその心身に引き受けながら存在していると考えています。2月まで私は遺伝子検査を受けていませんから、これまでは祖先の故郷、家系図、そして神の系譜を探ることでルーツ探究を深めてきました。

ルーツ探究は今後多くの日本人が取り組むでしょうから、その鍵について書いておきます。

私と同世代の1990年代初頭生まれならば、遺伝子検査以前に誰もが取っ掛かりやすいのは、祖父母の代を見ることです。なぜならば、この世代の祖父母は戦後の動乱期に都市部へ移動した人が多いため、そこで生まれた子(つまり両親)は、比較的自分自身と出身地が一致するからです。
特に東京、名古屋、大阪、博多などの各地域の主要都市圏で生まれ育った場合、両親ではなく祖父母を見ることから始めると良いでしょう。

これは祖父母の世代であれば、必ずしもその土地に縁を持っていたわけではないことが見えてくるからです。この観点から、私は父方・母方双方の血筋を家系図や、祖父母の故郷4つ全てに出向いて調査を続けてきました。

また家系図は有効ですが、江戸時代まではある程度遡れるものの、その祖先の名前や事績が不明であったり、そもそも彼らがどこからやってきたのかなどの情報は断片的で、ある時点で途絶えてしまいます。比較的事績が明瞭になるのは、幕末辺りからです。

言い換えれば、江戸時代以前の先祖の情報を知ることは、大半の人々にとっては現実的ではありません。特に江戸時代初期は、新たに江戸に幕府が開かれた影響もあり、移動が激しい時代の一つであったため、祖先の動きを正確に特定することは不可能です。つまり、家系図は一つの参照にはなりますが、遺伝子同様に唯一の答えを教えてくれるわけではないのです。

そして同時に考えなければならないのが、神の系譜のルーツです。国つ神計画研究所は、「古代日本×ルーツ×祭祀の追体験」という3つのテーマを独自に掛け合わせて研究を行っていますが、これは「古代日本」と「霊性」が交わる非分離の位置にルーツがあると考えているからです。つまり、一元的世界でも二元的世界でもない、多元的世界に日本の真理があるのです。

ルーツにおいて「神系(神の系譜)」を辿ることは、遺伝子に象徴される先端科学とは異なり、科学が解明できない非科学的世界の象徴となります。この全く異なる二つの領域を、あなた自身のルーツ探究で分離させずに非分離にした時、はじめて個人・民族のルーツが見えてきます。

この神系の辿り方は、神社に出向くことも有効ですが、むしろ土地の風土から得る体感を重視することが大切です。あなた自身にとって、「なぜか心地よい」と感じる場所があるでしょうが、その風土を解読することから全ては始まります。
解読するために、土地で奉祀されている神を前提に、その土地の歴史、文化、習俗、信仰など文字通り全てを調査する。この言語化できない体感が「霊的な体感」であり、「霊性」です。

この霊的な感覚を重視して、全国各地を何度も巡って体感を蓄積する。これは数字ではない霊性のデータを蓄積する行為であり、ルーツを探る上であなたにとって大きな力となるでしょう。この見えないデータが蓄積された時、科学的に提示される遺伝子検査の結果と見事に調和を遂げ、唯一無二のあなただけのルーツを特定する道が開けてきます。

冒頭で書いたように、現在、私が遺伝子検査を受けるまでの7年間をかけて日本各地で行ってきたルーツ探究について、具体的な方法と探究の旅を全て辿って開示する著作を書いています。なぜ今まとめるのかというと、遺伝子検査の結果を知ってしまうと先入観が生まれてしまうからです。

検査結果という先入観が一度確立すると、これまで非遺伝子次元でルーツ探究を行ってきた意義が大きくズレてしまいます。そこで、検査結果を受け取る5月下旬までに書き上げ、出版することにしました。
今月中には発表予定ですが、これをルーツ本の前編として位置づけ、後編では遺伝子検査の結果を受け取り、科学的な角度からこれまで自分の体感ベースで探究してきたルーツへの問いを突き詰めていき、こちらも著作として出版します。

この前編と後編を通して、血筋と神系という二つの異なるルーツが明らかとなり、誰もが持つ霊的な体感がどこまで遺伝子と関わるかを見極めることができます。

まさに、誰もが持つ唯一無二のルーツの正体を開示してみたいのです。

それは科学なのか、あるいは非科学なのか。それとも科学と非科学の交差によって初めて現れるものなのか。
ルーツ探究の旅は、自分自身と徹底的に向き合う旅であり、同時に日本・日本人を見つめる重要な機会となるでしょう。

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